うつ病の治療法 (2) お薬

体の病気と同じようにうつ病もお薬が有効です。

「うつ病のお薬って副作用や依存性が強いのでは?」と薬に抵抗感、否定的な先入観をもっていませんか? うつ病は、単なる「疲れ」、「気の持ちよう」ではなく「心の風邪」のようなものです。ですからお薬の力を借りて、病気の原因となっている脳の働きの低下を回復してあげる必要があります。

うつ病のお薬は脳内の神経伝達物質のバランスを整えてくれる強力な助っ人なのです。

現在は依存性や副作用の少ないお薬が開発され安全性が高くなっています。

以下が主にうつ病治療に使われるお薬です。医師は症状に応じてこれらの薬を組み合わせて処方します。

  1. 抗うつ薬
  2. 抗不安薬(精神安定剤)
  3. 抗精神病薬
  4. 精神刺激薬
  5. 睡眠薬

1. 抗うつ薬

うつ病の治療に大きな役割を担うお薬です。うつ病による脳内神経伝達物質(セロトニンやノルアドレナリン)のバランスの乱れを調整することで、憂うつな気分を和らげ症状を改善します。

現在の抗うつ薬は主にSSRI、SNRIと呼ばれる新しいタイプのお薬と、三環系抗うつ薬、四環系抗うつ薬と呼ばれるタイプのお薬の、計4種類に大別できます。

治療ではこれらの薬のどれかを1ヶ月ほど服用し、効果があれば継続、効果がなければ増量してさらに2~4週間後、効果がなければお薬の変更を行う、という流れです。

大体効果が出始めるまで少なくとも2週間以上はかかりますので、他のお薬に比べ効果が出るのがゆっくりと考えておき、少なくともその間は飲み続けることが大切です。

効果が現れる前に副作用が出ることもあります。比較的副作用の少ないものはSSRI、SNRIであり、現在はこれらが主流になりつつあります。しかしこれらも飲み始めは吐き気などの症状が出ることもあります。

【SSRI】選択的セロトニン再取り込み阻害剤 (Selective Serotonin Reuptake Inhibitor)の略称です。SSRIはうつ病の原因の1つである減少したセロトニンを増やすよう調整することで症状を改善する第三世代のお薬です。これまでの薬と違うところはセロトニン系にのみ作用することで、副作用が少なく服薬を続けやすいという利点があります。

【SNRI】セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤(Serotonin Noradrenaline Reuptake Inhibitor)の略称です。SNRIはセロトニンだけでなくノルアドレナリンの再取り込みも選択的に阻害することから、効果の面では三環系に近く、副作用においてはSSRIと同程度の第四世代のお薬です。他のお薬に比べ、副作用も少なく効果も高いのですが、高血圧や緑内障、前立腺肥大症などの疾患を持つ方は注意が必要です。

【三環系抗うつ薬】最初に開発された第一世代の抗うつ薬で、成分化学構造の特徴から三環系と呼ばれています。高い効果が得られますが、眠気、口の渇き、便秘、めまいなどの抗コリン性副作用も出やすいという特徴もあります。

【四環系抗うつ薬】三環系に続いて開発された第二世代の抗うつ薬。三環系に比べ副作用が少ないため使いやすいものの、効果は少し劣るといわれています。

2. 抗不安薬(精神安定剤)

抗うつ薬と合わせて、過度の不安や緊張には抗不安薬が用いられます。抗不安薬(精神安定剤)は、強い不安感や焦燥感を抑えるお薬です。

よく使用されるベンゾジアゼピン系は、長期間の服用により癖になりやすいため、急に止めたりせず、医師の指示に従い徐々に減らしていくことが重要です。副作用として眠気やだるさを感じることもあります。

3. 抗精神病薬(強力精神安定剤)

抗精神病薬(強力精神安定剤)はメジャートランキライザーと呼ばれ、うつ病以外では統合失調症や痴呆などの治療にも使用されます。定型抗精神病薬は1950年代から現在まで代表的な抗精神病薬として使われています。

幻覚や妄想、興奮はドーパミンといわれる脳内神経伝達物質が過剰分泌されることで起こると言われており、その分泌を抑えるのが定型抗精神病薬です。代表的な定型抗精神病薬は、クロルプロマジンやハロペリドールなどです。

しかしうつ状態の陰性症状にはあまり効果はなく、いくつかの副作用も指摘されています(手足のふるえや筋肉が固くなるパーキンソン症状や、そわそわ落ち着かずじっとしていられなくなるアカシジア、不随意運動を引き起こす遅発性ジスキネジアなど)。

一方、定型抗精神病薬の欠点を改善するべく開発されたのが、非定型抗精神病薬です。こちらは陰性症状に対する改善効果もあり、副作用も少ないと言われています。代表的なものにリスペリドンがあります。

200911241437.jpg

4. 精神刺激薬(中枢刺激薬)

ドーパミンやノルアドレナリンなど脳内神経伝達物質の分泌を刺激し、意欲や覚醒を促すのが精神刺激薬です。代表的なものには、メチルフェニデートがあり、うつ状態の気分や意欲を即効的に高めます。

しかし精神刺激薬(中枢刺激薬)は、長期間使用により依存性が出るため、医師の指示に従い、使用には十分注意する必要があります。

5. 睡眠薬

睡眠薬は、なかなか寝付けない、早朝に目覚めてしまう、などの、うつ病に伴う不眠を改善する場合に使われます。以前使われていたバルビツール酸系の睡眠薬は依存性が強かったため、最近はベンゾジアセピン系のものが使われます。

抗不安薬としても使われるベンゾジアゼピン系は眠気作用があるため、その特徴を生かし、睡眠薬として使用されています。睡眠障害のタイプによって、効き目の早いトリアゾラム、ブロチゾラムや、長時間有効なフルラゼパムなどを使い分けます。

【作用時間が短く、寝付きをよくするタイプ】なかなか寝付けない場合に用います。次の日まで体に残らないため眠気やだるさが残りません。副作用として一時的な記憶障害がみられることがあります。

【作用時間が長く、睡眠時間を長くするタイプ】夜中に目が覚める、朝早く目が覚めるという症状に使います。翌朝まで眠気やだるさが残ることがあります。

200911241437.jpg 200911241438.jpg 200911241438.jpg

お薬と上手に付き合いましょう!

1.気長にいきましょう

すぐに効果があらわれなくても心配いりません。一般的に効果があらわれるまでに1~3週間かかるといわれています。すぐに症状が軽くならないといって心配する必要はありません。

2.自己判断は禁物!

お薬によって一時的に症状がよくなっている可能性もあるため、ご自身の判断で量を減らしたり止めたりすると再び悪くなることがあります。医師の指示に従い、症状がよくなってもしばらくお薬はしっかり飲んでください。慢性化している例ではきちんと服薬していない例が多いと報告されています。抗うつ薬に依存性はありませんので、安心してお続けください。

3.量が増えても心配しないで

お薬は少量から様子を見て増やしていきます。お薬が増えたからといって、不安になる必要はありません。

200911241438.jpg

>>精神療法