ストレスとは、環境によって心や身体に負担がかかっている状態のことをいいます。
ストレス要因(ストレッサーということもあります)により、心や身体に負担のかかった状態(ストレス)がおき、これがいろいろな反応や症状をおこし(ストレス反応)、長期にわたると健康問題にかかりやすくなります。ストレス要因の影響は、個人要因や緩衝要因(周囲からの支援など)によって和らげられたり、強まったりします。
米国職業安全衛生研究所(NIOSH)による仕事のストレスのモデル
ストレス要因、ストレス反応、ストレスによる健康問題の例をあげておきます。
ストレス要因 | 仕事の忙しさ、人間関係、経済的困難など。異動や昇進など急な環境の変化もストレスの原因になることがあります。 |
ストレス反応 | いらいら、不安、ゆううつなど。動悸、ふるえ、腹痛や下痢、心拍や血圧の上昇など。 |
ストレスによる健康問題 | 高血圧、心臓病、糖尿病、消化器疾患などの身体の病気。うつ病などの精神的病気。けがや事故。 |
ストレスとうまくつきあうことは、あなたの健康、そして充実した人生にとって大事なことです。
よいストレス・悪いストレス
ストレス要因の程度が、自分で対処できる範囲であったり、自分がこれを挑戦と受け止めて主体的に対応できる場合には、達成感や自分自身の成長などよい結果につながることもあります。
ストレス要因が強すぎて心や身体がうまく反応できない場合や、 そのストレス要因が自分にとってつらい、嫌なものと認識された場合には、強いストレスが発生します。
脳とストレス
最近の研究では、ストレスとは脳の一部が機能低下した状態であると考えられています。
慢性的にストレス要因にさらされていると、前頭葉という部分の機能が低下してきて、そのため変化や刺激に対してうまく対応できず、心や身体が過剰に反応してしまうことがわかってきました。
ストレスに対して、毎日の工夫やストレス対処法により、前頭葉の機能を保つこと、また機能低下から回復させることがストレスへの上手な対応方法といえるでしょう。
次にい、仕事のストレスについてみていきましょう。
仕事の中では、いろいろなストレス要因に出会う可能性があります。たとえば、多すぎる仕事、職場の人間関係などです。どんな仕事の要因がストレスの原因となり、健康問題をおこしやすいのでしょうか。
多い仕事の要求度と低い裁量権の組み合わせ
仕事の要求度(仕事の忙しさや責任)が高い上に、仕事の裁量権が低い時にストレスがおきやすくなります。これを「仕事の要求度-コントロールモデル」といいます。裁量権は、仕事のコントロールと呼ばれることもあります。例えば、たくさんの仕事量があっても、いつ、どんな順番でやるかといった仕事の裁量権があればうまく対処できます。
努力と報酬のバランス
仕事の上で要求される努力にくらべて得られる報酬が少ない時にストレスがおきやすくなります。報酬には、給料や将来の見込みなどの他、適切な評価を受けられるなどの気持ちの上での報酬も含まれます。これを「努力-報酬不均衡モデル」といいます。
職場の人間関係
上司や同僚からの支援はストレスの影響を和らげます。職場の一体感やチームワークもストレスを減らす大事な要因です。一方で、職場での人間関係のトラブルや意見のぶつかり合い、職場のいじめはストレスの大きな原因になります。
その他
仕事の目的や自分の役目がはっきりしない「役割不明確」な状態ではストレスがおきやすくなります。職を失う可能性がある、将来のキャリアが見えにくいなどの「仕事の不安定」さもストレスの原因となることが知られています。
職場では、毎日さまざまなストレスを経験します。ストレスから自分の健康を守るために、上手にストレスに対処する方法を知っておくことが必要です。
次に、自分でできるメンタルケアについて学びましょう。